2019.10.28

翻訳を効率よく行うための用語集の作り方

翻訳を効率良く高品質なものにするためには、「用語集」の存在が不可欠と言っても過言ではありません。

特に、技術文書などを扱う場合、複数の意味を持つ用語は意味を統一する必要があり、統一されていないと読み手に誤解を生んでしまいます。誤解が生まれることでその文章を読んで購入した人に損害が発生してしまう可能性もあります。

このようなリスクを避けるために、特定の分野でよく使用される単語や用語は、「用語集」を作成することで、確認の工数を減らすことができ、効率的です。

今回は、翻訳を効率的に行うために必要な「用語集」を作成するポイントについて詳しく解説していきます。

翻訳における用語集の役割

翻訳品質の評価は、クライアントの好みに左右される要素もあるため、非常に難しいのが現状です。日本翻訳連盟(JTF)によれば、評価の基準は一定ではなく、明確な「ものさし」がありません。

しかし、誤訳や訳抜け、表現や用語の不統一は、誰でも客観的に判断できる品質のエラーと判断され、翻訳の品質を下げることになります。例えば、取扱説明書、契約書、特許、プレスリリースなど、企業活動において重要な文書の翻訳の場合は、表現や用語が統一されていることが重要です。

翻訳作業は、複数人で担当することも多く、文書を部分的に更新・追加することもあり、用語の統一は、想像以上に労力を必要とするためエラーのリスクは最小限に抑えることが大切です。
そこで役立つものが、特定の分野で使用される単語や用語をまとめた「用語集」です。

翻訳用の用語集には、業界用語、専門用語、略語などの特殊な用語、決まった表記にしたい用語を記載します。

「用語集」があれば、複数人で翻訳作業を行う場合でも、訳文に統一感が生まれて読みやすくなるでしょう。

文書の信頼性向上
「用語集」は固有名詞を統一することで、アクシデントを未然に防ぐ役割があります。例えば、誤った名称を使ってしまうと、ユーザーエクスペリエンス、企業への信頼度、セキュリティなどの低下に繋がるリスクがあります。

最近は、グーグル翻訳をはじめとするAI翻訳が増えてきましたが、製品名など固有名詞の翻訳に弱点を持っています。

「用語集」を備えておけば、AI翻訳を活用しても自動翻訳の精度を高めることができるでしょう。

用語集作成のメリット
用語集を作成するメリットは、前述した翻訳物の質の向上や用語の統一の他に、翻訳にかかる時間と費用の削減につながる、という点が挙げられます。

用語集が存在しない場合、確認作業、検証作業、修正作業などのコストがかかってしまいます。しかし、用語集があれば企業の内だけで使用されている特定の用語も翻訳者が対応しやすくなり、翻訳の効率化が実現できます。

用語集作成のポイント

用語集作成する際は、まずは用語集に記載する用語選びから始めましょう。

文書の使用目的や分野によっても表記は変わりますので、分野を指定することが重要で、原則として用語集にある言葉は、その通りに翻訳することがルールです。

1つの事柄に対して1つの訳語にすることで、用語表記を統一することが可能になります。同一の内容の訳語が重複しないように、Excelを使って確認できるようにしておきましょう。

標準表記の規則を決定する
分野と目的が決定したら、用語の標準表記をどんどんと登録していきます。

分野によっては業界団体の対訳集が販売されていることもありますので、参考にすると良いでしょう。すでに翻訳済みのファイルから重要な用語をピックアップする方法もあります。

用語は標準表記の規則が決まっていないと、表記の統一ができなくなるので注意してください。カタカナ表記で長音符を付ける・付けないなど、標準表記の規則を決めることが大切です。

動詞は登録しない
動詞の訳語を限定すると、語のつながりが不自然になることがあるため、動詞は登録しない方が無難です。

原文は動詞でも必ずしも動詞で訳されるわけではないので、表記を指定すると、逆に翻訳品質が下がってしまう可能性があります。

補足の説明をつける
単一の原文では、複数の訳語を使い分けるケースがあるため、ルールを決めておく必要があります。例えば、金融業界向けのソフトウェアマニュアルでは、defaultの訳語として、状況に応じて「規定値」「初期設定」「デフォルト(債務不履行)」などが挙げられます。

同じ用語をケースによってどう訳すのか、ルールを決めなければなりません。そのため、用語集には備考やメモ欄に、補足の説明を付け加えておくことも大切です。「どんな時に、どんなケースでは、原文用語をどう訳すのか」を定義し、用語集には、解説やケース別の用例を追加情報として記載すると効率的です。

先程も述べたように、翻訳作業は、1つの文書を複数人で作業したり、翻訳した後に部分的に更新・追加したりすることもあります。

明確な規定がないと、訳語の違いが発生してしまうため、用語集があればリスクを最小限に抑えることができるのです。

定期的な更新する
用語集は最新の状態を維持できるように、定期的に更新することも大切です。用語集を更新するタイミングは明確にして、常に最新の状態を保つようにしましょう。

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文書の翻訳において、用語の表記の統一は重要なポイントです。 
用語集があれば、複数人が同時に作業するような大きなプロジェクトの場合でも、文書の一貫性を保つことができ、専門用語の誤訳も防ぐことができます。

最終的に質の高い翻訳に仕上がり、コスト削減になるのが嬉しいメリットです。

また、AI翻訳を利用する際も、機械翻訳エンジンに用語集を適用させることも可能ですが、AI翻訳に対する用語集の適用は、まだまだ人の判断が必要とされています。

どの分野においても、将来的な翻訳作業のために、用語集作りを検討することをおすすめします。

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