2020.05.28

機械翻訳の精度がアップしたら人間の翻訳者はいらなくなる?

「AIが発達して機械翻訳の精度が上がったら、翻訳者はいらなくなる」といわれるようになってから久しいこの頃ですが、近年では機械翻訳の精度が大幅にアップしました。これによって、人間の翻訳者の需要は本当になくなってしまうのでしょうか。ここでは、現在の機械翻訳の精度や問題点、今後の翻訳者の需要などについてまとめました。

現在の機械翻訳の精度

機械翻訳は誕生以来、「ルールベース機械翻訳」、「統計的機械翻訳」、「ニューラル機械翻訳」と変化してきました。現在注目を浴びているのが最も新しいニューラル機械翻訳です。ニューラル機械翻訳では人間の脳を模倣したディープラーニング(深層学習)が利用されており、これによって難しいと言われてきた日本語における機械翻訳の品質が大きく向上しました。

翻訳の精度は翻訳対象言語や文書の種類によっても異なりますが、欧文同士の翻訳ではすでにHuman Parity(人間と同程度)と言われています。
また、科学技術論文や特許文でも5点満点中平均で4.5程度の翻訳精度だといわれています。今後さらにニューラル型機械翻訳が進歩すれば、他の言語ペアにおいても精度の高い翻訳が可能になるといえるでしょう。

ニューラル機械翻訳の問題点

ここまでご説明した通り現在の機械翻訳の精度は非常に高く、これもひとえにニューラル機械翻訳が誕生したおかげだといえます。しかしながら、ニューラル翻訳にはそれまでの翻訳方法にはなかった問題点があることもまた事実です。ここでは、ニューラル機械翻訳の問題点についてみていきましょう。

■訳抜け・重複訳が起こる
ニューラル機械翻訳は単語レベルで対応させて訳文を作っているわけではないため、訳抜けが起こることがあります。また、同様の理由で重複訳が起こることもあります。ニューラル機械翻訳においては、原文が過不足なく訳されるわけではないという問題があります。
訳抜けなどの問題点は短期間で改善されると予想されていましたが、完全に問題が解決されるまでには、まだ時間がかかるかもしれません。

■誤りに気付きにくい
単語を1つ1つ直訳した不自然な訳文は誰もが目にしたことがあると思いますが、ニューラル翻訳ではそれまでの機械翻訳ではできなかったような自然な訳文を作ることが可能です。訳す文章の内容によっては、まるで人間が作成したような滑らかな文章になります。
とはいえ、「自然な訳文=正確な訳文」ではありません。一見きれいな訳になっているけれど原文と内容が異なる、ということが起こることがあります。訳文を読んだだけでは誤りに気付けないことも多いため、注意が必要です。
この場合、逆翻訳という技術を使用することである程度誤りを確認することができます。訳された訳文を、再度、元の言語に翻訳しなおし、元の原文に戻っていれば訳出された訳文に問題がなかったと確認できます。

■まったく違う訳が出る
ニューラル翻訳では、原文の文字列を単語ごとに分散表現というベクトルに変換する「embedding」が用いられています。これによって数値として単語の意味をとらえられるようになったため、それまでの機械翻訳に比べて柔軟な対応が可能になりました。
しかし、その柔軟性の高さゆえにまったく違う訳が出ることがあります。従来の機械翻訳では起こりえなかった誤訳になることもあるので注意が必要です。

■学習データにあまり出てこない専門用や固有名詞が苦手
ニューラル機械翻訳では、学習させる対訳の量によって訳出の精度が変わります。専門用語や固有名詞など学習データにあまり出てこない用語を正しく訳出することができません。
実務翻訳においては、専門性の高い文書を訳すことが多くあります。特許や医学、IT関連などの文書では、ニューラル機械翻訳で扱ってない単語が出てくることも多々あります。
専門性の高い文書の翻訳に関しては、この点がネックになるかもしれません。

用語集を併用できるサービスであれば、固有名詞や専門用語は用語集で運用する必要があります。

■翻訳者の需要はなくならない
ニューラル機械翻訳の登場で翻訳の精度が大幅に向上したため、使い方次第では十分実用できます。苦手だといわれてきたマーケティング的な翻訳も、ニューラル機械翻訳では流暢に翻訳します。すでに機械翻訳を積極的に取り入れている企業も増えています。
とはいえ、人間にしかできない翻訳もあることは確かです。
例えば映画の字幕。単なる翻訳ではなく、内容に合わせて現地化する必要があり、これを機械ができるようになるのは難しいと言われています。

そのため、近い将来に人間の翻訳者がいらなくなるということはまずありません。機械翻訳でできる翻訳と、人間でなければできない翻訳の棲み分けが進むと思われます。むしろ、機械でできることは機械にやらせ、人間はより知的な翻訳に集中することができるようになるでしょう。機械にはできない人間ならではの翻訳技術を身に着けることが、これからの翻訳者にとっては重要だといえるでしょう。

まとめ

十印では、高精度な機械翻訳と、質の高い人間による翻訳を提供しています。内容に合わせて、機械翻訳と人手翻訳の使い分けや、併せての使用など、57年の翻訳実績のある十印にお任せください。最も効率的な方法をアドバイスいたします。

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