AI翻訳のメリット・デメリット。急速に進化を続けるAI翻訳の限界とは
AIの技術はさまざまな分野に浸透してきており、近年のその進化のスピードは驚異的なものとなっています。機械翻訳の分野もそのひとつです。とくに、2016年には機械翻訳へ深層学習が取り入れられたことで、AI翻訳として急激な進化を遂げています。
2016年以降に飛躍的に進化したAI翻訳
深層学習は音声認識技術からスタートし、2000年代以降にはさまざまな分野に応用されるようになりました。1980年代以降、DNN(Deep Neural Network/ディープニューラルネットワーク)が深層学習に利用されるようになったことで、DNNと深層学習を利用したニューラル機械翻訳が開発され、2016年以降にかけて、GoogleやMicrosoft、Globaleseなどがニューラル機械翻訳を使用したサービスを始めています。AI翻訳はここ数年で急速に進化したといえるでしょう。
記述ルールが決められた文書ならAI翻訳でも高い精度の翻訳が完成
AI翻訳は、従来までの機械翻訳に比べ、翻訳精度が非常に高くなってきているのが特徴です。AI翻訳を使用すると、高額なコストをかけて翻訳者を雇うことなく、あるいは時間をかけて翻訳ができあがってくるのを待つことなく、その場ですぐに高精度な翻訳がなされるというメリットがあります。
AI翻訳においては、言葉の意味の解釈は行われていません。ただ、意味を踏まえることは行われるようになってきています。深層学習をベースとした機械翻訳では、語順や語感など、文章の流れを考慮して翻訳が行われているのです。そのためAI翻訳された文章を見ると、それまでの機械翻訳よりも、意味を踏まえた自然な文章ができあがっているように見えるわけです。
このような深層学習を利用したAI翻訳の精度向上の余地はまだまだ多く残されています。ただ、現状でさえ、中学生で学習するレベルの英語であれば高い精度で翻訳することが可能となっています。近い将来には、法律文書や特許文書、論文やといった記述ルールが決められている文書ならば、精度の高い翻訳文ができあがるようになるだろうといわれています。
ニュアンスや文脈までは読み取れないAI翻訳
しかし、AI翻訳でも歯が立たない分野が存在します。小説やエッセイ、シナリオなどといった文書の分野です。これらの文書では、作者の主観が入り、同じ文章でも前後の文脈で意味がまったく異なる場合があります。文章そのものではなく、そういったニュアンスを捉えて文書全体を翻訳するのは、現在の深層学習を利用したAI翻訳では難しくなっています。
深層学習は人間の行動や属性などをコンピューターに学習させていく手法を取ります。AI翻訳の場合は、サンプルとなる文章を大量に学習させていきます。しかし、その学習内容に準じた翻訳を行うため、イレギュラーな翻訳には対応できません。
たとえば、女性が就くことが一般的となっている「ある職業」があったとすると、深層学習では「その職業に就いている人物は女性形で訳す」と学習することになります。そこで、その職業に就いた人物が男性だったとしても、「彼女」と誤訳するような場合が発生してしまいます。
また、小説やエッセイ、シナリオなどといった文章の場合には、それが書かれている国の文化に根ざしています。同じ会話や単語であっても、その国によって人が受け取るニュアンスが異なる場合も多くあります。
しかし現在のAI翻訳では、まだ各国の文化的背景までは学習されておらず、そのようなニュアンスを誤訳しやすい傾向にあります。このような要素は翻訳者による翻訳作業、いわゆる人手翻訳でも誤訳に結びつきやすいものですが、それはAI翻訳でも変わりはありません。
人は多彩な情報を用いて、複数の角度から瞬時に「文言」を分析して使用しています。その点、現在のAI翻訳はどうしても、目の前のテキストの内容だけを解釈して翻訳を行っていますので、細かなニュアンスを必要とする翻訳は苦手です。
そう遠くない将来に、文化や文言のニュアンスまで読み取ることができるAIが登場したならば、翻訳のすべてをAI翻訳にまかせ、翻訳者の必要がない世界が訪れるかもしれません。ただそれはまだ、かなり先の出来事になるといえます。
現状のAI翻訳は、あくまでツールという位置づけです。そのツールが使えるかどうかは、結局、使う側が決めることだといえるでしょう。
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