文学が機械翻訳で訳せる日は来るのか
近年、AIの発達と共に、機械翻訳の精度は飛躍的に向上しています。あるテキストを機械翻訳とは気づかずに読み進めて、不自然な表現が見つかり、初めて機械翻訳だと気づいた経験のある方も少なくないのではないでしょうか。
機械翻訳のメリットは、なんといっても翻訳作業を大幅に短縮できるところです。しかし、現在の機械翻訳は全ての翻訳に万能ではなく、苦手な分野もあり、精度に関しても、人の手を加えずとも問題ないレベルから、まだ人力による翻訳と比べると精度が劣るレベルまで幅があります。
今回は、機械翻訳が苦手とされている文学の翻訳について、何がネックになっているのか、機械翻訳の特性から見ていきましょう。
文学作品の翻訳の難しさ
機械翻訳での翻訳に限らず、文学作品の翻訳は容易ではありません。なぜなら文学は、地域の文化・習慣と密接につながっており、言葉を訳すだけでは作者の伝えたいメッセージを反映させられないからです。そのため、翻訳言語において似たような表現があるなら置き換える、同じようなイメージを想起させるような文に置き換えるなど、意訳やローカリゼーションなど追加要素が必要な場合も少なくありません。
例えば、日本では蝉は夏の風物詩です。蝉の声が聞こえないと夏が来た気がしないという方もいるかもしれません。しかし、他の地域の人にとって日本人の様に「蝉=夏」とは想像できない可能性が高くなります。ヨーロッパにも蝉はいますが、地中海沿岸の一部の地域にのみ生息しているため、知らない人も多くいます。また、ヨーロッパの蝉は小型で日本の蝉のほどうるさく鳴かず、街中では多くないため、イメージはかなり異なります。
日本の四季ははっきりしていて、俳句などに季語はなくてはならないものであるため、日本人は季節を表す言葉に敏感です。しかし、蝉の例の様に、翻訳言語の地域によっては、イメージが異なったり、もしくはイメージがわかなかったりする可能性もあるのです。そのため、状況によっては、翻訳の際に別の生き物に置き換えたり、夏であることを別の表現で表したりすることが必要になる場合もあるのです。
機械翻訳の特徴
機械翻訳では、AIは翻訳者の様に文化・習慣を理解したり、歴史的背景を考えたりしながら翻訳しているわけではありません。確かに今までの機械翻訳と比較すれば、単語レベルではなく、文・文章全体など、大きな単位での意味合いを考慮することもある程度は可能です。しかし独特の文脈や言い回しであったり、文のねじれがあったりすると、正しく翻訳できなかったり、訳抜けが発生したりする可能性もあります。例えば、主語がなくても日本語ではさほど問題にならないでしょう。しかし、主語がないと文が成り立たない言語に翻訳するのであれば、AIは主語を補って翻訳してしまいます。例えば、文脈上は男性でも主語がない場合、男性よりも女性の多い職業では使用率の高い女性が主語に選ばれ、女性形で訳出されるケースもあります。また、日本語で「友達」は単数で使うケースもありますが「達」があるため、複数形に訳されてしまうなどの例もあります。
機械翻訳の上手な活用と機械翻訳の未来
文学では、わざと余韻を残したり、含みを持たせて読み手の自由な想像力の余地を残したりするのも技巧のうちです。しかし、ニューラル機械翻訳では、ニューラルネットワークが似ていると判断した情報から文章が作り出されます。そのため、深層学習により作られた膨大なデータの中から適切な表現が見つけられない場合、不自然な訳文になる可能性はあります。
機械翻訳を上手に使うコツは、翻訳に適応させるために、主語を省かないなど文法的に正しく、明確な文章を書くことです。機械翻訳利用者が、機械翻訳に適した文章を書くことが日常化すれば、機械翻訳により訳出される文章は、ポストエディットなしでも精度の高い翻訳になると予想されます。
また、将来的には更なる機械翻訳技術の向上により、文学の特色である文化的・社会的な背景を考慮したデータが作られ、人力による翻訳と遜色ない翻訳文が機械翻訳で可能になる日はそう遠くないかもしれません。
十印のAI機械翻訳「T-tact AN-ZIN®」
十印が国家プロジェクトで作成した「T-tact AN-ZIN®」は、TOEIC960点相当の精度の高いAI翻訳エンジンです。「翻訳バンク」に蓄積された大量で質の良い翻訳データの収集により、今までの機械翻訳と比べ高品質な翻訳が可能となりました。
翻訳された内容が正確かどうか確認できる逆翻訳機能は、訳文をクリックするだけで手軽に使えます。そのため、原文を調整しながら訳文を確認すれば、機械翻訳のみで翻訳作業を完了させることも可能です。
十印のAI翻訳「T-tact AN-ZIN®」は、高性能で安全性の高い機械翻訳ツールです。暗号化通信で万全のセキュリティ環境でご利用いただけるため、情報漏洩の心配はありません。IPアドレス制限機能もあり、許可なく翻訳結果を再利用しないため、安心してご利用いただける翻訳ツールです。
まとめ
十印では、1980年代より機械翻訳の進展に寄与してきました。T-tact AN-ZINでは、高精度の汎用AI翻訳エンジン、専門分野に特化したエンジンと翻訳精度をあげる自社専用エンジンで、専門分野でも高品質の翻訳の提供が可能になりました。
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