ChatGPTの翻訳はこれまでのAI翻訳と何が違うのか?
近年のAI技術の進歩は目覚ましく、2022年に公開されたChatGPTは、大きな話題となりました。簡単に使えるだけでなく、質問に対して人間が答えるような回答を得られるため、個人や学校、企業でも利用される機会が増えています。
ChatGPTは、多機能で様々な言語に対応しているため翻訳ツールとしての利用も可能ですが、導入を考えていても安全性や翻訳精度、使い方のコツなど、気になるところもあるのではないでしょうか。
本稿では、ChatGPTとこれまでのAI翻訳ツールを比較し、使い方の違いについて解説していきます。
ChatGPTとは?
ChatGPTは、質問や要望にAIチャットボットが回答してくれる会話型AIサービスです。GPT(Generative Pre-trained Transformer)とは、「生成可能な事前学習済み変換器」という意味です。ChatGPTは、深層学習技術を使用し、学習元となるテキストデータとしてインターネット上の膨大なデータを活用しながらテキストを生成します。テキストデータをもとに、文法、パターンやコンテクストを学ぶ「教師なし学習」と呼ばれる手法でトレーニングされているため、様々な文脈に対応し、豊富な語彙の利用が可能になりました。
これまでの検索エンジンは、キーワードに関連のあるウェブサイトを表示していました。しかし、ウェブサイトの提示のみならず質問に答えるところが、ChatGPTとこれまでの検索エンジンとの大きな違いです。
また、特筆すべきはその柔軟性です。プロンプト(指示)で会話を楽しんだり、疑問を解消したり、文章作成や翻訳などのタスクを処理したりと、様々な使い方ができます。
ChatGPTを使った翻訳
ChatGPTは、様々な言語に対応しているため、オンライン翻訳ツールとしての利用も可能です。ChatGPTを利用した翻訳では、次の3点を指定すれば求める翻訳結果に近づけられます。
・想定読者に合わせた文体を選ぶ
・生成文の文字数制限をする
・コンテクストを指定する
最新モデルであるGPT-4を用いた日本語の翻訳精度は、80%となっています。注意点は、あまりにもっともらしい文章が生成されるため、翻訳の誤りに気づきにくいところです。チェック修正であるポストエディットをしていないChatGPTによる翻訳では、生成された文の内容および翻訳のチェックができる体制を整えることが望ましいと言えます。
ChatGPTとAI翻訳ツールの共通点と違い
AI翻訳ツールとChatGPTの共通のメリットは、翻訳スピードの速さです。また、翻訳結果が必ずしも正確であるとは限らない、長い文章の翻訳が苦手、訳の抜け漏れがあり得るところも共通点です。
AI翻訳ツールのメリットは、専門分野に特化したエンジンの利用で精度の高い翻訳が可能なところ、有料版AI翻訳ツールではセキュリティ面で安心できるという点です。
ChatGPTのAI翻訳ツールのメリットは、前述したとおり、文体が選べる、文字数制限ができる、コンテクストの指定が可能であるという3点です。メリットの多いChatGPTですが、文体やスタイルの指示が適切でない場合、理解できない可能性もあるため、適切なプロンプトができるかどうかが翻訳精度を高めるカギとなります。
どちらもAIを使っているAI翻訳ツールとChatGPTですが、共通点も異なる点もあります。それぞれの特徴を知り、目的に合わせて適切に使い分け、今後も増えるであろう翻訳業務の効率化に役立てましょう。
ChatGPT利用時のリスク
便利なChatGPTですが、リスクもあります。個人情報や社外秘情報などをChatGPTなどのプロンプトに入力すると、機密情報が洩れる可能性があります。AIが機密情報を学習してしまわないよう、ビジネスに利用する際はプライバシーポリシーの把握やセキュリティポリシー、ガイドラインの策定と順守で、情報漏洩を防ぐことが大切です。社内での利用制限や、有料版の使用、強固なアクセス制御、データの暗号化や安全な通信プロトコルの利用などで、機密情報を保護しましょう。
また、生成AIが出力する翻訳は、必ずしも正確とは限りません。一見完璧に見える翻訳文でも、訳文がわかりにくい、言い回しが不自然である、偏った学習データにより情報の整合性に疑問があるといったケースもあります。そのため、トレーニングデータは適切に管理し、訳出された内容および訳文のチェックをせず利用することは避けたいものです。訳出された結果をチェックするためには、翻訳会社のポストエディットサービスを利用するのも一案です。
十印のAI機械翻訳「T-tact AN-ZIN®」
十印のAI翻訳「T-tact AN-ZIN®」は、大量の文書をスピーディーに翻訳できる機械翻訳ツールです。国家プロジェクトで作成したTOEIC960点相当の精度の高いAI翻訳エンジンで、高品質な翻訳が可能になりました。
暗号化通信とIPアドレス制限機能で情報漏洩リスクがないため、セキュリティ面でも安心してご利用いただける翻訳ツールです。
PDFファイルをはじめ、マイクロソフト社のオフィス製品上でも直接翻訳できるプラグイン機能でスピーディーに翻訳し、業務の効率化を図ることができます。
ISO27001(ISMS)認証による安全で高精度のAI機械翻訳導入をお考えなら、初期計画から効率的な運用方法まで丁寧なサポートをご提供できる十印に、是非ご相談ください。
まとめ
十印では、半世紀に渡る翻訳に関するノウハウをもとに、様々なシーンの翻訳を行っています。十印のAI翻訳「T-tact AN-ZIN®」で、グローバルな舞台でいち早く正確な情報提供をするお手伝いをします。
また十印では、AI翻訳サービス以外にも、ポストエディット、ご利用シーン別にご希望の翻訳のレベルに合わせてローカリゼーションとトランスクリエーションサービスにも対応しております。
時代の流れに乗り、現地向けに最適化するための知見、翻訳、ライティングなら、是非十印にお問い合わせください。
▶著者紹介
株式会社十印 マーケティング部
石川弘美
1990年に株式会社十印に入社し、マニュアル制作に従事。日本語原稿の書き起こしから、多言語マニュアル制作のディレクションまで、幅広い業務を担当。
2002年より、ローカリゼーション・プロジェクトのマネジメントを中心業務とし、同社の数々の大型プロジェクトの進行管理を担当。2009年よりはマーケティング部にて宣伝広報活動とともにマーケティング活動を行う。2018年より一般社団法人日本翻訳連盟理事、アジア太平洋機械翻訳協会理事。