機械翻訳がたどってきた歴史
現在は、機械翻訳のビジネス活用が普及しています。この状況は、一昔前の機械翻訳性能を知っている方にとって、にわかには信じがたいかもしれません。コンピューターによる翻訳は、いくつかの手法やテクノロジーが創出されてきたタイミングで進化を遂げています。こちらでは、機械翻訳がたどってきた歴史についてお話します。
機械翻訳の黎明期
「機械翻訳」という概念の着想は、17世紀にまでさかのぼります。フランスの数学者・数学者であったルネ・デカルトは、多言語間の同意語に単一の記号を割り当て普遍化する考え方を提唱しました。その後しばらく機械翻訳の発展は概念的な段階にとどまりますが、1954年代にはコンピューターを活用して実用化するための研究が始められ、1980年代には一定の成果をあげ始めました。
実用性に乏しかった時代
日本においては、1990年前後に最初の機械翻訳ブームが起きています。機械翻訳システムが搭載されたワークステーションが電気通信事業者からリリースされています。当時は「夢の技術」と取り沙汰された機械翻訳ですが、出力される訳文は正確性に欠けるものでした。機械翻訳後の編集作業に時間がかかってしまうことも理由となり、導入した事業者からは評価されませんでした。ワークステーションとソフトを合計すると、300万円程度の費用がかかっていた事態でもあるため、コストと有用性が釣り合わないと判断されたのも低評価の一因です。
二度目の機械翻訳ブームが起きたのは、1995~1997年です。すでに、一般的にパソコンが普及していた時代であり、インターネットが登場し始めた時代でもあります。家庭用の翻訳ソフトが安価でリリースされたことをきっかけに、一般ユーザーの間でも機械翻訳が一躍ブームとなりました。このタイミングでは、機械翻訳を業務に活用しようとした翻訳家も少なくなかったようです。しかし、第一次ブーム時と比較すると向上した翻訳性能も、専門的な産業における翻訳業務には十分ではありませんでした。こうした理由から、機械翻訳は二度目のブームにおいても、「総合的には実用性に欠ける」という評価に落ち着いてしまいます。
統計翻訳の時代へ
2005年頃には、Microsoftによる機械翻訳の研究が始まりました。翌年には、すでに実用化の例が見られています。また、2008年頃には日本においても携帯電話でユーザーが気軽に翻訳サービスを利用できるシステムがリリースされました。2013年には、機械翻訳のレベルはTOEIC600点程度のレベルに達したと考えられています。
2010年前後は集積される膨大な「ビッグデータ」を活用した、「統計翻訳」の時代です。統計翻訳自体は1980年頃からIBMによって研究が進められていましたが、この時代になって成果が認められるようになります。
翻訳精度を実用レベルに押し上げた「ニューラル」
2016年頃には、「統計翻訳」から人間の脳を模したシステムを利用した「ニューラル翻訳」の時代へと移り変わります。Googleが打ち出した機械翻訳システムは、統計翻訳以上にナチュラルで正確な訳文の出力を実現しました。2018年に時点で機械翻訳のレベルに関しては「TOEIC800点レベルに達している」という声があがっています。
少しの編集作業でビジネスにも活用できる精度の到達しており、今後も進化は続く見通しです。
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2000年以前には実用性に欠ける印象があった機械翻訳ですが、ソリューションとなるテクノロジーが生まれる度に進化し、現在はビジネス活用において申し分ないレベルに到達しています。機械翻訳の導入を検討している方は、十印へとお気軽にご相談ください。