急速な発展を遂げた機械翻訳!翻訳者の仕事を奪う驚異となりうるのか
近年、さまざまな分野で機械化やAI、機械学習などの技術が進歩を遂げ、人間の仕事が奪われる日が来るとまでいわれています。翻訳の分野でも同様で、機械翻訳が急速な発展を遂げました。
翻訳者の仕事は、いつか機械翻訳に奪われてしまうのでしょうか?
そこでこの記事では、機械翻訳技術の進歩や翻訳者の必要性、機械翻訳と人による翻訳の使い分けについて、ご説明します。
ディープラーニングにより機械翻訳の精度が向上している
機械翻訳が登場し始めたころは、文法やアルゴリズムに基づいて翻訳するという機械翻訳の手法が一般的でした。
しかし、この手法だと大量にルール登録が必要で、翻訳の準備がとても大変です。また、機械翻訳は慣用句や口語などの訳が苦手なので、翻訳精度が低いものでした。
その後、ディープラーニングという技術が登場したことをきっかけに、機械翻訳は急速な進化を遂げました。
ディープラーニングが搭載された機械翻訳は、ビッグデータと呼ばれる大量の翻訳データをインプットすると、それらのデータを学習します。より多くの翻訳データを学ぶことで、機械翻訳は正しい翻訳に限りなく近づけることができるようになったのです。
その結果、機械翻訳の翻訳精度は大幅に向上しました。
近年では、インプットする翻訳データをインターネットから大量に用意できるようになり、人による翻訳結果もデータとしてインプットしているので、アルゴリズムに導かれた機械翻訳の直訳ではなく、人間による意訳も機械翻訳で実現できるようになったのです。
このように、ディープラーニングによる機械翻訳の急速な進歩によって、人間の翻訳者は不要になる時代が来るとさえ言われています。
翻訳者がまだまだ必要である理由とは?
機械翻訳の進化により、人間の翻訳者が不要になるのではないかと示唆されていますが、実際は人間の翻訳者が不要になることはありません。
その根拠について、以下の文章でご説明します。
人間味のある訳は人間にしかできない
機械翻訳に、人間の心情をくみ取った人間味のある訳はできません。
ストーリーの登場人物の心情を細かくくみ取った表現にしたり、同じことをいっていても言葉を少しずつ言い換えたり、文章の切り方やつなげ方に変化を与えて緊迫感を演出するなどという翻訳は、人間だからできるのです。
性質の違う言語同士の翻訳が苦手
英語とドイツ語などの性質が似ている言語同士の翻訳は、アルゴリズムがシンプルなので機械翻訳が得意とするところです。
しかし、英語と日本語など、まったく性質が異なるタイプの言語同士の翻訳は、機械翻訳にとっては難しいもの。
例えば、日本語は主語を省略しがちですが、英語には主語の省略はほぼありません。また、英語の場合無生物が主語になる文が多いですが、日本語にはそのような文章はほとんどありません。
「The story made her happy.」という文章があるとします。無生物主語の英文をそのまま日本語に訳すと「その話は彼女を幸せにした」となりますが、日本語ではあまりそういった言い回しを使いません。そこで、主語を変えて「その話を聞いて彼女は幸せに感じた」と訳す必要があります。
このように、性質がまったく異なる翻訳は、機械翻訳には難しく、機械翻訳の翻訳結果を人間がチェックする必要があるのです。
同音異義語などによる誤訳が起こる
日本語には、「京都」と「今日と」、「返信」と「変身」などの同音異義語が数多く存在します。漢字にすれば意味が通りやすいのですが、ひらがな表記をすると機械翻訳の誤訳が増えます。
人間であれば、前後の文章から適切な翻訳を行えるので、誤訳のチェックが必要となるのです。
機械翻訳と翻訳者は用途や分野で使い分けるのがよい
それでは、機械翻訳と人による翻訳のどちらを選べばよいのでしょうか?
この二つは、どちらが優れているということはなく、用途や分野によって使い分けることが必要といえます。
機械翻訳を選ぶと、コストや作業時間の大幅な削減につながりますが、直訳になったり誤訳が多かったりと、翻訳の品質の低下が問題です。ポストエディットという人の目によるチェックと修正作業を適宜行うことで、翻訳品質を保つことが可能になります。また、物語やエッセイなど人間味のある翻訳が必要なケースでは、人による翻訳が活躍します。
このように、機械翻訳と翻訳者による翻訳の特性を理解し、適宜使い分けていくことが重要なのです。
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ここでは、機械翻訳の急速な発展と、翻訳者がまだまだ必要とされる翻訳作業の背景についてご紹介しました。機械翻訳は一定の翻訳品質とスピード感あふれる翻訳が得られる手法ですが、人間による誤訳のチェックや修正が必要とされる場面も多々あります。物語やエッセイなどの人間味のある文章においては、翻訳者でなければ表現できないものも多く存在します。したがって、機械翻訳と翻訳者による翻訳のどちらか一方だけを使うのではなく、上手に二つの方法を使い分けるのがよいでしょう。
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