機械翻訳によって変わった特許翻訳
翻訳には様々なジャンルがありますが、その中でも大きな割合を占めているのが特許翻訳です。そして、特許翻訳は機械翻訳によって大きく変わりました。ここでは、特許翻訳が機械翻訳によって変わった理由および特許翻訳に機械翻訳を利用する際のポイントについてまとめました。
翻訳支援ツールと特許翻訳
翻訳をサポートするツールとして40年ほど前に登場したのが、翻訳支援ツールです。翻訳支援ツールには用語データベースや翻訳メモリが搭載されており、これらを利用することによって翻訳作業を効率化することができます。そして、翻訳支援ツールは広い範囲で使用されるようになり、マニュアル翻訳などの効率性は大幅に向上しました。
しかしながら、翻訳支援ツールの恩恵を存分に受けられなかったのが特許翻訳です。なぜなら、特許は新規発明に関する文書であるため過去の翻訳例を参考にできないためです。特許翻訳にも翻訳支援ツールは利用されていたものの、その用途は他のジャンルの翻訳に比べてかなり限定されていました。翻訳業界に大きな変化を及ぼした翻訳支援ツールですが、特許翻訳に関しては目を見張るほどの影響はなかったといえるでしょう。
機械翻訳によって特許翻訳が変わった理由
特許翻訳が大きく変わったのは、ニューラル機械翻訳が登場してからです。ニューラル機械翻訳は、人間の神経回路をモデルにして作られた人工的なニューラルネットワークを用いた機械翻訳です。ニューラル機械翻訳が登場する以前はルールベース翻訳や統計的機械翻訳が利用されていましたが、ニューラル機械翻訳が登場したことによって大きく機械翻訳の精度が向上しました。
以前の機械翻訳とニューラル機械翻訳の大きな違いは、原文全体を1つの固まりとしてとらえるため自然な訳文を得られるという点です。単純に1つ1つの単語を置き換えるのではなく文脈や文意を翻訳するため、人間の翻訳に大きく近づいたといえるでしょう。
なお、機械に学習させるためには「教材」が必要となりますが、特許の場合は文書が公開されているため、容易に教材となる対訳データを用意することができます。そのため、特許用の機械翻訳エンジンは比較的簡単に学習させることができました。また、特許文書ならではの難しい言い回しは、機械が構文を解析するにはかえって好都合です。このこともあり、特許文書の翻訳には機械翻訳が多く利用されるようになりました。
機械翻訳のデメリット
ニューラル機械翻訳は精度の高さが評価されており、特許文書の翻訳にも用いられています。しかし、だからといってデメリットがないわけではありません。
まず、ニューラル機械翻訳は訳抜けが生じることがあるという欠点があります。しかしながら、文章そのものが自然であるため訳文だけを読んでも訳抜けを見つけることができません。しっかりと原文と照らし合わせながら訳文を確認して、初めて訳抜けを発見することができます。ミスを見落としやすいのは、大きなリスクだといえるでしょう。
また、精度が高いとはいえ機械翻訳のみですべてが完結するわけではありません。機械翻訳で特許文書を訳した後には、人間によるポストエディットを行う必要があります。そして、場合によってはポストエディットがかなりの作業用になる場合もあります。一口で特許用文書といっても機械翻訳に向いている文書と向いていない文書があるため、しっかりと判断したうえで機械翻訳を利用する必要があるといえるでしょう。
特許翻訳に機械翻訳を利用する際のポイント
いくつかのデメリットがあるニューラル機械翻訳ですが、ポイントを押さえて利用することによって翻訳の質を上げることが可能です。まず、原文の書き方によって機械翻訳による翻訳の質は大きく変化します。誤訳を避けるためには、原文を曖昧さのない明確な文章にする必要があるといえるでしょう。
また、特許分野に特化した機械翻訳を利用することも大切です。翻訳文書に適した機械翻訳を利用することで、効率的に質の高い訳文を得ることができるのではないでしょうか。
質の高い機械翻訳をお求めの際には十印にご相談ください
ここでご紹介したように、機械翻訳によって特許翻訳は大きく変化しました。適切にプレエディットやポストエディットを利用すれば、特許翻訳に機械翻訳を用いることは十分に可能だといえるでしょう。機械翻訳を導入すれば、コスト削減や時間短縮にもつながるのではないでしょうか。
また、特許独特の言い回しを正確に翻訳するためには、特許の対訳で学習させた専用の翻訳エンジンを使うことお勧めます。
十印がご提供する特許エンジンは、特許庁と協力して、公開されているすべての特許データを用いて特許専用に機械学習させた高品質の翻訳エンジンです。特許関連の翻訳をお考えの場合はご相談ください。
●プレエディットやポストエディットについてはこちらの記事も参考にして下さい。
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・機械翻訳の品質を上げる「プリエディット」とは?その概要とメリットを解説
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