ポストエディットは翻訳よりも簡単なのか?
近年、AI翻訳をはじめとした機械翻訳はすっかり一般化されました。とても便利な機械翻訳ですが、まだまだ精度の問題などの課題も残されています。そのため、機械翻訳による翻訳結果を人がチェックして修正する、ポストエディットと呼ばれる工程が欠かせません。しかし、ポストエディットとは何か、精度は上がるのか、どのように依頼すればよいのか、よくわからないとお悩みのご担当者様も多いかもしれません。
本稿では、ポストエディットとは何かを知り、人手翻訳との違い、最適な方法の選び方を解説していきます。
ポストエディットとは何か?
ポストエディットとは、機械翻訳により訳出された文章を人手によりチェックする工程です。AI翻訳などでは精度の高い翻訳が可能になっていますが、現時点ではまだ完全ではなく、人がチェックする必要があります。
チェックするポイントは、抜けや誤訳など不適切な部分の修正、専門分野やコンテクストに合わせた単語・訳文への修正、トーンの統一などが挙げられます。
ポストエディットには、修正度合いによってライトポストエディットとフルポストエディットがあります。フルポストエディットでは、プロによる人手翻訳と同レベルまで修正するため、時間とコストはライトポストエディットより多くかかります。目的に合わせて選びましょう。
ポストエディットは翻訳よりも簡単なのか?
ポストエディットは一度機械翻訳が訳出した訳文を元に作業を行うため、翻訳ができない人でもできそうな気がします。しかし実際は、翻訳の知識は欠かせません。翻訳の知識なしには、ポストエディットで翻訳結果を適切にチェック修正し、翻訳精度を高めることはできないのです。
また、特にフルポストエディットを行う際は、依頼された分野に精通していないと正確な修正は行えません。さらに、求められている修正レベルに合わせられる技術と経験も必要となります。
このように、ポストエディットは、決して翻訳よりも簡単で知識や技術がなくてもできる、というものではないのです。
ポストエディットの国際規格「ISO18587」
ポストエディットには、「ISO18587」と呼ばれる国際規格があります。国際規格「ISO18587」は、ポストエディットの作業概要およびプロセス、修正レベルや目的、ポストエディターとしての資格やトレーニング観点など、ポストエディットを適切に行うための様々なガイドラインが記載されています。ポストエディットでは、機械翻訳独特の一文そっくり抜けるなどのエラーを見落とさないよう、機械翻訳の特徴をよく知る必要があるからです。
一方、「ISO17100」は翻訳の国際規格です。どちらもポストエディットと翻訳のノウハウの一定の目安になるため、ポストエディットを行う際には重視するべきです。
ただし、「ISO18587」は現時点で国内には認証を発行する機関が存在していないため、国内企業は取得することができません。そのため、高品質なポストエディットを考えるなら、「ISO17100」を取得していて、「ISO18587」に則った作業が可能な翻訳会社を選ぶようにすると安心でしょう。
ポストエディット導入によるメリット
ポストエディットが翻訳よりも簡単というのは誤解であるとわかっても、どのようなメリットがあるのか気になるかもしれません。
機械翻訳は人手による翻訳と比較して、圧倒的な作業スピードが最大の魅力です。しかし、あまりに高品質なフルポストエディットを求めると、時間的には一般的な人手による翻訳と変わらなくなってしまう可能性もあります。
そのため、求める精度によって使い分けてみましょう。多少翻訳が荒削りでも、ある程度まで修正するだけでよいのであればライトポストエディット、人手による翻訳と遜色ない内容にまで修正するのであればフルポストエディット、そして、より内容を重視するならば人手翻訳を選ぶと良いでしょう。納期、品質、予算などの優先順位に合わせられることは、ポストエディット導入の最大のメリットです。人手による翻訳と機械翻訳、ポストエディットを使い分け、翻訳作業を効率化して、業務効率全体を上げるようにしましょう。
十印のポストエディット
十印では、お客様のご要望に合わせ、ライトポストエディットからフルポストエディットまで、翻訳・ポストエディットについて多くの知識を持った経験豊富なポストエディターが、機械翻訳の訳文の最適化を迅速に行います。
ポストエディットの国際規格ISO18587に基づく高品質なフルポストエディットサービスだけでなく、短期間での納品をご希望ならライトポストエディットも承ります。
高品質なポストエディットサービスをご検討中なら、経験豊富な十印にお問い合わせください。
まとめ
十印では、文書・映像などの各種翻訳、ポストエディットなど、歴史ある翻訳会社ならではの翻訳のプロによるノウハウで、トータル翻訳サービスを提供しています。AI機械翻訳ツールのご利用からポストエディットまで、お客様に寄り添いサポートしますので、翻訳に関するお問い合わせなら、お気軽に十印までご連絡ください。
▶著者紹介
株式会社十印 マーケティング部
石川弘美
1990年に株式会社十印に入社し、マニュアル制作に従事。日本語原稿の書き起こしから、多言語マニュアル制作のディレクションまで、幅広い業務を担当。
2002年より、ローカリゼーション・プロジェクトのマネジメントを中心業務とし、同社の数々の大型プロジェクトの進行管理を担当。2009年よりはマーケティング部にて宣伝広報活動とともにマーケティング活動を行う。2018年より一般社団法人日本翻訳連盟理事、アジア太平洋機械翻訳協会理事。