AI翻訳の進化とポストエディットの役割

AI翻訳をはじめとした機械翻訳の浸透と共に、「ポストエディット」という言葉をよく聞くようになりました。機械翻訳が主流となった現在、いかにスピーディーに翻訳するかに焦点が当てられがちですが、正確性も翻訳において重要な要素です。どれだけ進化していても、機械翻訳を利用した後には、ポストエディットという工程が必要になってきます。
本稿では、ポストエディットとは何か、進化したAI翻訳と組み合わせるメリット、ポストエディットの役割について解説していきます。
ポストエディットとは?
「ポストエディット」とは、機械翻訳ツールが訳出した文章の「後編集」という意味です。つまり、機械によって訳出された文章のチェックと修正をする工程です。元の文書に沿って、誤訳や抜け・漏れがないか、全体の用語や表現、表記の統一がされているかなどを確認し、修正していきます。背景や状況に即した翻訳になっているか、使用目的に合っているかなども、チェックのポイントとなります。
また、誤解を招きそうな表現や、わかりにくい表現になっていないか、不適切な翻訳になっていないかも確認し、自然かつ読みやすい文章へと整えていきます。
ライトポストエディットとフルポストエディットの違い
ポストエディットには、「ライトポストエディット」と「フルポストエディット」の2種類があります。ライトポストエディットは、概要が把握できる程度の最低限のチェックと修正を行うのに対し、フルポストエディットは人手の翻訳結果と変わらないほどの結果になるように、状況や目的に合わせて編集します。
フルポストエディットには、国際標準規格の“ISO18587”があり、ポストエディットの枠組みを保証しています。翻訳に関する国際標準規格の“ISO17100”と並んで、翻訳品質を保証するための枠組みが定められています。
ポストエディットが必要な理由とは?
AI翻訳ツールのおかげで、スピーディーに翻訳ができるようになりました。翻訳スピードでは、機械翻訳は人手と比べて圧倒的に速いため、これまで翻訳を諦めていた文書も翻訳できるようになるのは大きなメリットです。
一方、翻訳された内容が正しいかどうかの確認は人にしかできません。また、AI翻訳ツールでは、翻訳時に文がそっくり抜けてしまったり、ハルシネーションという誤った情報を翻訳したりするリスクもあり、訳出内容が必ずしも正しいとは限りません。そのため、機械翻訳の翻訳結果の正確性を確認するには、ポストエディットが欠かせないのです。
このように、機械翻訳のスピードという特性を活かしつつ精度を保証するためには、機械翻訳の後のポストエディットが不可欠です。
ポストエディットを使いこなすには?
使用目的に合わせて、AI翻訳を効果的に利用するための工夫として、ポストエディットとの組み合わせが生まれました。しかし、この組み合わせは、全てに使えるわけではありません。どのような点に注意すれば、機械翻訳とポストエディットを組み合わせるメリットがあるのか見てみましょう。
高性能な機械翻訳ツールを使う
機械翻訳ツールによって訳出された文章の品質によって、ポストエディットにかかる時間も変わります。ポストエディットにかかる時間を短縮するためには、高品質な翻訳ができる翻訳ツールを使うとよいでしょう。
機械翻訳が苦手とする文書は避ける
主語がない、参考資料がない、背景がはっきりしない文章は、機械翻訳の苦手分野です。また、機械翻訳はコピーライティングや文学作品が得意ではないため、ポストエディットに非常に時間がかかり、機械翻訳の迅速な翻訳というメリットが活かせません。
フルポストエディットとライトポストエディットを使い分ける
社内向けならライトポストエディット、納期に余裕があるからフルポストエディットなど、翻訳文書の使用目的と納期によって、フルポストエディットとライトポストエディットを使い分けることにより、最適なポストエディットが可能になります。
このように、機械翻訳とポストエディットを使って翻訳時間の短縮というメリットを享受するには、機械翻訳が得意とする分野の文書を翻訳することが大切です。
十印のポストエディット
十印のポストエディットは、ライトポストエディットとフルポストエディットの2種類です。翻訳・ポストエディットの知識を持った経験豊富なポストエディターが、生成AIや機械翻訳の訳文の最適化を迅速に行います。
ポストエディットの国際標準規格ISO18587に基づく高品質なフルポストエディットサービスだけでなく、短納期をご希望ならライトポストエディットも対応可能です。セキュリティ対策万全で高品質の十印のAI翻訳ツールと合わせれば、安心してご利用いただけます。
生成AI・機械翻訳後の翻訳結果のチェックと修正なら、安心のポストエディットサービスの十印に、ぜひお問い合わせください。
まとめ
十印では、文書・映像などの各種翻訳やポストエディットなど、歴史ある翻訳会社ならではのノウハウで、翻訳サービス全般におけるお悩みにお応えします。
AI翻訳、技術翻訳からポストエディット、ローカリゼーションやトランスクリエーションまで、グローバルなビジネス展開をお考えのお客様にベストな翻訳をご提案いたします。どうぞお気軽にお問い合わせください。
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▶著者紹介
株式会社十印 マーケティング部
石川弘美
1990年に株式会社十印に入社し、マニュアル制作に従事。日本語原稿の書き起こしから、多言語マニュアル制作のディレクションまで、幅広い業務を担当。
2002年より、ローカリゼーション・プロジェクトのマネジメントを中心業務とし、同社の数々の大型プロジェクトの進行管理を担当。2009年よりはマーケティング部にて宣伝広報活動とともにマーケティング活動を行う。2018年より一般社団法人日本翻訳連盟理事、アジア太平洋機械翻訳協会理事。
